2008年02月03日

■50歳のスポーツ 卓球ヘボコーチ_2

僕の自宅で、彼と作戦会議も試みた。
現在の能力の強みと弱みについて、お互いの共通認識づくりをしたかった。練習での対戦相手分析を記録させた理由は、試合の中で観察・記憶・分析する習慣づけをさせたかったからだ。また、現在の技術(戦力)は、以前と比較するとパワーアップした。しかし、これまでの成績を考慮すると、何回戦であろうと、チャレンジャーそのものとしか、いわざるを得ない。
そこで、ランチェスター戦略を参考にし、弱者と位置づけいかにして強者と戦うかの戦略をアドバイスし、彼と具体的に作戦を組み立てた。

「戦略なきは座して死を待つが如し」という言葉がある。
この言葉に従えば、いかに優れた戦術も、戦略には勝てないということらしい。
これが最後のアドバイスになった。


 “試合とは、「自分自身のパフォーマンスを最大化」する
  活動である。そして、そのために努力することは、
  幸運な結果につながる可能性が大きい。”

しかし、現実は彼にあまりにも強烈な試練を与えた。
3年間の努力、6ヶ月間の3+プロジェクトの結果は0-3。1回戦で終わった。
しかも、何もできなく完敗だった。

試合当日
彼と僕は、駅で待ち合わせし中野駅へ。
駅で卓球部顧問の先生と後輩1年生二人と合流。
傘をさして会場の中野区立中野体育館へ向かった。

途中、中野サンプラザを通った。僕はここでチューリップのコンサートを見た。チューリップの歌で「青春の影」はお気に入りだったが、ライブで財津和夫の歌声を聴いたのは初めてだった。このときボーカリストの歌声のすばらしさに感動してしまった。ふとそんなことを思い出した。この歌は青春にありがちな、切ないラブソング。しかし、僕はそんなことより「青春の影」というタイトルが、なにげに気になった。

会場に到着し、早速プログラムを見る。
第23回 東京都国公立高等学校卓球大会 男子シングルス戦の参加者は928名。今日一日で決勝戦まで行うらしい。
そして第一シード選手は、なんと彼がインターハイ予選の5回戦で負けた相手だった。これには驚いた。と同時に「いけるかも」そんな想いが、一瞬頭をよぎった。彼もそう思った。

2時間ほど待ち試合が始まった。
試合前のフォア打ちで対戦相手を観察する。対戦相手は右ペンホルダー、表ラバーでヘッドが回らない打ち方。ちょっと下がって、しかも打球の軌道は直線的ではなく山なり。高校卓球部にしてはこの球筋は情けない。試合が始まると、対戦相手はさっきと違ってフォア側がイボ高ラバーで、前陣ブロックマンになった。しまった、謀られた。彼は初めて当たるタイプ。何本かのやり取りがあったが、いきなり頭の中が真っ白になってしまった。試合は本来の彼にほど遠かった。終わった瞬間、彼は目にタオルをあて天を仰いだ。その後、しばらく行方不明になる。残念だが、3年間ほぼひとり卓球部で頑張った、3+プロジェクトで努力した彼の結果である。

顧問の先生は、外で涙を流していた彼を捜しだし、彼を僕に託した。まだ側で泣いている。僕も学生時代同じような経験をしている。こういうときは泣きやむまで待つ。これが一番だ。

君は、1回戦で敗退した。これは事実である。とても貴重で嫌な経験をしてしまった。一言でいうと気持ちが弱い。これが全てである。
でも、それがどうした。もっと大切なことがある。


僕は彼をこの程度で潰さないために、また多くの友人が協力してくれたことに感謝の気持ちを伝えるためにも、報告を日記に記した。

僕は彼に質問した。
努力が足りなかったから、幸運な結果が得られなかった?
卓球をすることが嫌になった?

そうじゃないよね。
確かに「パフォーマンスを最大化」はできなかったけど、君はできる限りの努力をした。最後の夏休みに大きな宿題ができてしまったが、この課題は大学でも一般になってからでも解決すればいい。
僕が君に、常々いってきたことは、結果を優先することではなかったはずだ。君は好きな卓球に打ち込んだ。多くの時間を準備に費やした。この掛け替えのない行為自体に価値があるのだ!そして、確乎として生きるとき、この体験は美しく輝き、明日へとつながる。
光と影は、しばしば成功と失敗に喩えられるが、「青春の影」とは、何かに打ち込むことでエネルギーを燃焼させ、その炎で照らしだされた自分自身の影である。僕はそんなふうに捉えたい。つまり「青春の影」は、人生の若々しい季節の瞬間(とき)、失敗を恐れない行動力で、自分自身が歩んだ青い足跡なのだ。

それからもうひとつ。
君は、「コミットメント」という言葉を知っているだろうか。
「コミットメント」とは、深く真剣に関わり合うことで、お互いに信頼関係を築き、目的の実現を達成するために責任と義務を負い、喜びも悲しみも共有すること。 いま流行りの軽い関係ではなく、かなりシビヤな関係だ。君は年長者と「コミットメント」を結んだ。この体験は、僕にとっても君にとっても、一生に一度しかない出会いだったのだ。だから、共有した時間は、何者にも代え難く、また何よりも贅沢な瞬間(とき)だった。いずれ、この体験を君が評価するときがくるに違いない。どんな評価になるだろうか。僕はその時を待ちたい。

また、僕からのアドバイスは、多くの友人からのものが含まれている。実感はないかもしれないが、君は多くの人の支援を受け、そしてつながっていた。だから、ひとりではなかった。
信じられないかもしれないが、大人たちは、とても良い刺激を受けた。あるひとは、ドキドキワクワクした。センチメンタルにもなった。青春のころを思い出したひともいた。大人たちは君を通して、若き日のころにつながったのだ。君の痛みを伴う結果を知ったとき、切なくなったのだ。君を無心で応援してくれた大人たちに、感謝の気持ちを忘れてはいけない。君は決して、ひとりではなかったのだ。

最後に、最も大切なことを伝えたい。
君にとってひとり卓球部員の3年間、3+プロジェクトの6ヶ月間は、どんな意味を持っていたか?どんな変化が起こったのか?
君自身が発見することによって、この3+プロジェクトは完成する。そこに、ほんとうの成果がある。

彼と僕の充実した、また、とても切ない真夏の出来事が
記憶に残った。僕らは感謝しなければならいと思った。
ラベル:感謝
posted by トモ兄 at 21:15| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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