2008年04月16日

■『51%理論』_3

◎『51%理論』は、当時のルール抜きには考えられない

1937年の世界選手権、女子シングルの決勝で、攻守兼備の選手と徹底した守備型選手が対戦した。第3ゲームに入ったところで、1時間45分に達した。当時、1時間45分たっても勝負がつかない場合は、両者失格になるというルールがあった。その年は両者失格になり優勝者なしの信じられない結果となった。

こうした悲劇をなくすためにルールが改正された。
1ゲームを20分の制限時間とし、リードしている方が勝ち。同点なら次のポイントをとった方が勝ちになる。このルールは現在の促進ルールとして改善される。

しかし、ヨーロッパでは守備を主体とする鉄壁な守りの強豪選手が多く、依然としてツッツキによる、粘り合いの試合は残り続けた。

結果的に、長時間の試合になったとする。
選手達は、忍耐とエネルギー消費を強いられることになる。ましてや、団体戦・単複・ミックスが同時開催であった時代である。また、観客にとっても、単純なツッツキの長時間の試合は、卓球の魅力が半減する。


◎『51%理論』とは

荻村伊智朗 藤井基男=共著『卓球物語』大修館書店
荻村伊智朗著 今野昇編『笑いを忘れた日』卓球王国
を参考にまとめてみます。
(卓球ファンにとっては、面白い本です)

荻村さんは、バークマンとリーチの試合を見て、さらに上の目標が存在することを認識する。特に体力トレーニングや練習量も増え、世界を制覇するための「最も速い」卓球戦術のために考え直し、練り直した。

バークマンやリーチと粘り合いになってもミスしません。
たとえば、○対○で最後のゲームの制限時間になった場合、あとは1本勝負です。粘りきってもルールによって両者失格です。最後の数秒で、51%以上の命中率(相手コートに返球できる割合)があれば、100%の得点率のあるスマッシュで勝つことができる。だったら、なぜそれを最初からやらないのか。つまり速攻です。その戦術をしてもセットオールジュースまでもつれ込む可能性もあるが、体力の消耗は防げる。11日間、朝8時から夜11時ぐらいまでの試合を通しても、勝ち抜くチャンスがある。
『51%理論』とは、粘るときは命中率(相手コートに返球できる割合)100%、決めるときは得点率100%の理論です。最終的理想は、自分だけのオールスマッシュの試合だった。

荻村さんは『51%理論』を実現するために、カット打ちが難しいとされるスポンジで、2000本をノーミスで続ける練習などで克服し、攻撃は、世界一速いドライブサーブからの3球目攻撃と、決める球(高速スマッシュ)は得点率を100%にするように練習をかさねた。

『51%理論』の最終目的は、よりスピーディーで、強い卓球スタイルの実現を達成するための理論であると思います。
シンプルにまとめてみると

目的:得点を獲得するために
手法:少ない命中率で、得点率を高めることによって
活動:速攻を行うこと

『51%理論』を有効性・効果的という観点からみると、
この速攻システムで実現される目的は、より上位の目的に沿っているかです。よりスピーディーで、強い卓球スタイルの実現のために、球質のスピードを追求すること、また、速攻を実現させることは、ヨーロッパの守りを主体とした選手にとって、今まで経験がなかった卓球スタイルで、全身打法の強力なスマッシュなどは脅威になる。同時に攻撃の場面が増えることで、当時の単調な試合を改善できる。

効率的という観点からみると、
この速攻システムで目的達成度と使用資源(リソース)を最小限にできたかということです。速攻を行うことによって、試合時間が短縮され、エネルギー消費が低減でき体力の温存もできる。当時の試合形式で勝ち抜く可能性が高くなります。

有用・実効性の観点から見ると、
この速攻システムが、目的である得点の獲得を実現するものになっているかです。速攻は、守りを主体とする選手に対して失点率を高め、手法の精度をより高めることで、得点率を高めることができます。実際の試合で試され、初出場で優勝を達成でき実証されました。

『51%理論』は、スピード化や戦術面でも大きく影響しました。
たとえば、短絡的ですが前陣という考え方と、レシーブにおいても先手をとるためのストップ技術をプラスすると、中国のお家芸である前陣速攻です。つまり新たな考え方やテクニックをプラスすることで多様化し、『51%理論』は継承され発展し続けていると思うのです。
『51%理論』はかなり理想が高いですが、なぜ多様化し継承・発展するのかといえば、手法:においてテクニックは、その人のサイズにあった創意工夫が自由だからだと思います。現在では、ハイリスク・ハイリターンの戦術に受け継がれているのだと思っています。

そういった意味で、注目している日本の選手は、大矢英俊選手と福原愛選手の動向が気になるところです。


◎最後に、『51%理論』が実行されるきっかけになった、
 運命的な、“歴史を変える一本の練習”のエピソードを
 紹介し終わることにします。

世界選手権ロンドン大会の団体戦で、ハンガリーと対戦。一番手が敗れたあと、二番手で富田選手がシド選手に挑戦した。富田選手は左きき、一枚ラバーで流し打ちが得意な選手。シド選手は前年の3冠王で攻撃力も備えた、前・中陣のカットマン。

富田選手には試合前の練習で、相手の力をはかる探査システムがある。得意の流しボールを一発だけ打ちその反応を試す。
ヨーロッパの選手には、日本のように練習でワンコースで打つ習慣がなかったが、さすがの王者の貫禄、シド選手はワンコースに対して、受けてたちクロスを打ち始めた。
そこで、富田選手は得意のフォアサイドを切る流し打ちをした。すると、富田選手のフォアコーナーへ入りノータッチで抜けてしまった。打ち返されるとは予想していなかったし、ましてや難しいコースへ。

このとき、富田選手も荻村選手もある決心をした。日本のコーチ陣には歓迎されていなかったが、『51%理論』を決行することに。強敵であるハンガリーを破る突破口になったのは、“歴史を変える一本の練習”であった。

富田選手は積極果敢にスマッシュを打ち続け、シド選手を破った。これが団体戦優勝への大きなステップになったのはいうまでもありません。さらには、日本が卓球王国になるきっかけをつくる最初の一勝となった。





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posted by トモ兄 at 01:59| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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